どこから来て、どこへ行くのか

公開をずっと楽しみにしていた『神様のパズル』を観てきました。面白そうだなとは思っていたけれど、こうまで面白いとは思わなかった。観終わった直後に、パンフレット、サントラ盤をすぐに買うなんて初めてのこと。
サラカ役の谷村美月さんはお客さんが感情移入して自分と照らし合わせて観るのはたぶん基一(主役・寿司屋でバイトしながらミュージシャンとしての成功を夢見る)の方かな?と感じておられたようですが、私はこのホミズ サラカにグングン惹き込まれていきました。(ミズホ程、頭良くないケド)自分の部屋に色気もそっけもないスチールの机にパソコン置いて、ジャージ姿でカタカタやってるし、いっつもサンダル履きだし(笑)。
そんなサラカをなんとか外へ引っ張り出そうとする基一だが、淋しいのはむしろ人の中というサラカ。イプシロンとか、クロスポイントとか、理系ではない方だと引いてしまうかもしれない単語がのっけからダァーっと出てくるわけですが、セリフのひとつ、ひとつがものすごいチカラで胸に迫ってくる。染みてくる。脚本のノベライズ本が欲しいなって思うくらい。大泣き!石田ゆり子さんは今回教授役でしたが、やっぱり、このヒトはちゃんとしているのだ。なんていうんだろう。ただのおりこうさんで真面目なヒトっていうんではなしに、何があろうとちゃんと自分の頭で考えられて、このヒトはまともでわかっているんじゃないかっていう、なぁーんかそんな大きなチカラを感じます。
脚本をお書きになられた方が、この映画は「夢」を追いかけている人にエールをおくる作品ではなく、「現実とはズレた現実感」の中で溜息をついたり、苦しんだり、諦めたりしている人達に向けて、「希望」があるように!虚ろな「夢」よりも、真っ当な「希望」を!人生が改めて新鮮に感じられるようにと書かれたそうですが、本当に、観終わった後、そんな気持ちで一杯になる映画でした。このサントラはきっと、何度も、何度も、繰り返し、聴くことになりそう。基一がサラカにベートーベンの「第九(歓喜の歌)」を歌うシーンが最高なのですが、あそこで”虚ろな夢”と”真っ当な希望”、両方を基一が握り締めていたのが面白い(笑)。2008年の現在、このタイミングでこの映画に出会えたということが、神様のパズルのようでした。
んがっ。
ま、感情移入するったって、アタシも宇宙を作りたい!って思ってたわけでもないですけどね(笑)。そもそも、ホミズサラカ自身、ホントに宇宙を作りたいと思っていたかどうかも怪しい。だって、ミズホサラカは「私は自分のことを天才だと思ったことなんてないっ!」ってなヒトだからね?だけど、なんか世間が勝手に騒いでるしっていう、そのことで苦しんでいたりもするヒトだし。サラカの母親が自分が諸悪の根源だったかのように謝るオチになってたけど、そもそもは、会社を定年退職し、妻にも先立たれた男が暇を持て余し、自分はどこから来たのか?などと考えるようになり、その答えを探す為に大学に行き、更に、「人間の手で宇宙を創れないのか?」という奇妙な疑問を持ったことがそもそもの発端だったのではないか?自分が何者かわかっていない基一、サラカだからこそ、この男に出会ってしまい、巻き込まれたとも云えるが、基一やサラカの希望や才能はこの男の疑問解決の為に在ったわけではあるまい・・・・というはがゆさが強く残って仕方がない。おそらくそんな企画は持ち上がらないだろうが、その後の基一&サラカ。別展開の『神様のパズル vol.2』がありますようにと願ってやまない。

